(ちょっとあまりにも読み難かったので一部加筆修正しました)
「ぷしゅー」とか「しふくぅぅ」とか、俺大っ嫌い。
……ゴメンなぁ、久々に日記更新したと思ったらいきなりこんなネガティブな話題で。大人には色々あんのよ。いやまああれよ? 言うほどのこたあ無いですけども。普段通りの砂を噛むような日々ですけどもそれは良いとして。
今更ですが変な揉め事を避けるべく、あえて作品の固有名を出すことは控えまして。俺の日記を気まぐれに読んで下さっている方々、かつ上記のワードでピンと来る方々のみに向けて書いているつもりで。気になる方はぐぐってみて下さい、たぶんそれぞれ一発でそれらしき作品がヒットします。
前者はまだ、「あー、何かこいつ勘違いしとるわ」ってスルー出来たのですが後者に至っては。つい最近、アニメ化決定記念か何か知らんけど、俺が購読している週刊誌に出張掲載とやらで目にして以来、吐き気をもよおすほどの嫌悪感を抱いておりまして。
とりあえずの結論は出ています。
「お前ぇに向けて作ってねぇから!」で、済む話だと思うのです。
ただ、良く言われるように、「好き」の対義語は「無感動無関心」キリが無いね。逆に俺がここまで気持ち悪くなるということは。作品としての価値を何らかの形で感じているのではないかと。それを認めた上で、ウイスキーヲタクを自認する身として何故これほどまでの拒否反応が出るのかという事を、ちょっと分析してみようかと思った次第です。それにお付き合いいただける方がもしいらっしゃれば、この先へとお進み下さい。
【お酒のラインアップへの疑問】
うん、そりゃさあ俺も別に? 「カクテル」と言った時に、まずはマティーニやマンハッタン! なんてセオリーを唱えるつもりはありません。実際あれですわ、マティーニを初めて飲んで「美味え!」と思う人の方が少数派じゃね、ってのは分かっているつもりです。けどね。上記の某作品、WEBで公開している話があるらしくて。第1話から第3話を読んでみたところ、紹介されているカクテルが。
梅スプレッド(?)、カルアミルク、カウボーイ。
……え?
何より。最初の梅スプレッドって、何? いやまあ俺は、スコッチファンではあるけどもカクテルに関しては素人同然なので、単なる無知の所為なのかもしれませんけど。聞いたこと無いっすよ? 少なくとも俺が普段通っているバーで、「マスター、『梅スプレッド』頂戴」って言ったら、「……はい?」って聞き返されること必至だと思いますよ? それなりにちゃんとしたバーで、梅酒置いてある所って結構少ないですよ? それを第1話にあえて持って来るって?
次いで、カルアミルクはまあいいとしてカウボーイ。これは諸説あるものの基本的にはその名の通り西部劇やら何やらのアメリカをイメージしたカクテルで、よく知られたレシピはそのアメリカのバーボンウイスキーを使うはず。それが単に「ウイスキー」という記載って何だそりゃ。これがたとえばですよ、「オーソドックスなレシピではバーボンウイスキーを使いますが、実はシェリーカスク熟成のウイスキーも牛乳との相性は結構良くて、スコッチウイスキーで最近流行りの、短熟グレンロセス等を使っても面白いですよ!」みたいなコメントがあれば、充分受け入れられるのですが。何すか単に「ウイスキー」って。この辺りで既に、この作品に対して俺の頭の上には大きな?マークが出てきているのですが。ひとまず次に進みましょう。
【リアリティの無さ】
作中では家飲みで、色々なカクテル(?)が登場するようです、が。実際問題、家飲みで多種多様なカクテルなんか飲めやしないっすよ! ボトルの置き場所無いですし、度数の高いスピリッツならともかくリキュールはフルーツ系とかクリーム系とかかなり早く劣化しますし。家庭で置いておけるお酒には限りがあるのです。だからこそ、BARで飲む楽しさや有り難みがある訳で。
そもそもこの作品、カクテルを「作る」シーンの描写が全くと言って良いほどありませんよね? いえね、夫婦どちらかのご家庭がもの凄く裕福で、広大な地下倉庫があってお酒は全て管理されている、みたいなトンデモ設定があればまだ納得出来るのですが。
フィクションに対してそんな野暮な事言うなよ、という意見もあるとは思いますけど、それにしても何か引っかかるのです。引き続き検討します。
【プロフェッショナルの仕事をあまりに軽視してはいまいか】
最初に言うときますけど、いわゆる「バーテンダーさん」って凄いですよ? 各種お酒の管理、グラスの選び方、氷屋さんから仕入れた氷の扱い、シェイクやステア等の技術の研鑽、客の好みの把握、店内にいる客全員への配慮、等々……。この作品では、基本的に主人公の旦那らしき人物がカクテルを作っているようですが、この旦那とやらはバーテンダーとしての修行を積んだ方なのでしょうか? とてもそうは見えません。ウイスキーヲタクとしてあえて言わせていただけば、カクテルというものは。単に材料を混ぜればよいというものではありません。
ここまでで感じた疑問に対して、一つの反論があると思われます。いやいや本作の主人公は、お酒を飲むと「素の自分」が出てしまって恥ずかしいから、あえてBARではなくて「宅飲み」をしているんですよー、っと。
だとすればここで、少し視点を変えてみたいと思います。誤解を恐れずに言えばこの作品は、たとえば寿司が大好きだけど外食すると寿司屋の大将とどうしても喧嘩になるから、仕方なくコンビニでパックの寿司を買って自宅で食べているおっさんの話だと考えれば。……んー、別に腹は立たないですよね、むしろその前提で色々なコンビニ寿司の分析とか紹介とかしてもらえれば、結構面白い作品になるんじゃねーの? とか思いますわ。一体何が違うのでしょう。
そう考えた時に一つ思い当たるのは。本作にはネガティブな姿勢が一切見受けられないこと。上記の例であれば間違いなく「本当はちゃんとした寿司屋で食べる方が美味しいということは分かっているけど、仕方無く自宅で食べています。それはそれで悪くは無いですよ、だからその魅力を語りましょう」というスタンスが読者に伝わると思うのです。その一歩引いた姿勢が無いんじゃなかろうか。
「外飲みで素の自分を晒すのが恥ずかしい」という設定ですけども、実際にその描き方を見ればこれ。本人は恥ずかしいと思っているけれども周りから見たらむしろ可愛らしいという、有無を言わさぬ全肯定をしているのではないでしょうか。外で飲むことに関しても「えー? BARとかそーゆーんじゃないんだよねー、自宅で愛する人にカクテルを作ってもらえる幸せ-、みたいなー?」という認識しか、作者には無いのではないでしょうか。そう疑わざるを得ません。
つまるところ本作のテーマは「お酒」でも「カクテル」でもなくて。
「あたしバリバリのキャリアウーマン()だけどこんなに可愛らしい内面もあって、オシャレなカクテルなんかも飲んだりして、しかもそれをダンナに作らせる、ステキでスゴイあたしを見て、とにかくあたしを見てっ!」というキャラモノなんじゃねえかなと。これどっかで見たことあんぞ。
……あれだ、俺TUEEEEじゃね? 俺TUEEEEの亜種ですよねこれ。
うん、そらウイスキーヲタクとは合わないですわ。俺が大好きなウイスキーやカクテルを、「あたしTUEEEE」の添え物や引き立て役にさせられちゃあ、かなんわ。作者の方さあ、せめてもう少し外でまともなお酒の飲み方をされてはいかがですか?
本作もその傾向に嵌まっていると思いますが。「コンビニ」「居酒屋」「定食屋」……最近のグルメ系の漫画で、これらを扱うものが異様に多くはありませんか。
確かに。骨の折れる取材をしなくとも何らかのアウトプットを出すことが出来、かつ多くの読者の共感を得やすい、というメリットがあるようには思います。……メリット? ええと、そもそもメリットって何ぞや?
漫画というものをこよなく愛する、いちヲタクとしてはですね。
商業メディアから発信されるからには、受け手の最大公約数を見据えた安易な共感を求めるのではなく。受け手の知見を広めるような、ワクワクさせるような作品を「創って」欲しいものであるなあと、切に願います。
まーでもなー、ただでさえ出版不況の世の中で、「売れる」見込みが高いものを売って何が悪い!? ってな意見もあるでしょうから、中々難しいところではありますねえ。
ってことで最後に。
だからこそ俺は、ウイスキーの同人誌を作ろうと思い立ったのです。
まだまだ知識も経験も足りませんけど。言うてもほんの十数年前、ウイスキーの事なんて何も知らなかった自分でさえ、その魅力に取り憑かれ、それに思いがけない巡り合わせも重なって、「ウイスキーってこんなに面白いんだ、楽しいんだ美味しいんだ!」と得られた想いを、どうにかして形にして色々な方々に伝えたい。そう決意したのです、改めて。
さあて、ここまでカッコ付けて偉そうなこと言い切ったからには。ちゃんと次の本出さないとね! 仮に夏コミ落ちても、「オリジナル本だからコミティアとか他のイベントとかにも出られるよなあ?」言い訳きかねえぞ? と、自分を追い込んでいくスタイルで。今宵も乾杯。